『目に見えるものだけを信じてはいけない。』この言葉は様々な場面で使用されますが、今回は人の色覚差異の存在と、それによる弊害の解決法について書きたいと思います。自分が見た世界を他人が見ている世界と同一であるとは限らない、ということです。私の白衣姿をみたことがある方はご存じかも知れませんが、必ずと言って良いほど身につけている物があります。それは3色のマーカーペンです。オレンジ・青・緑。この3色であることには理由があります。それはカラーユニバーサルデザインという概念を知ったからです。
目次
カラーユニバーサルデザインとは
まず、カラーユニバーサルデザインという言葉を聞いたことが無い方もいらっしゃると思いますので簡単な説明をします。生命の多様性と同じく、人にも様々な面で多様性があり、色覚にも多様性があります。これは一つの個性です。僕は小さな頃「僕の見ている色はみんなも同じく見えてるのだろうか。ある人は白黒で見えてたり、ネガポジで見えていたりしないのだろうか。」と考えたことがあります。(昭和の人は白黒で見えていた、と思っていた頃もありました。テレビが白黒だったので(笑))
実際には白黒に見えていたりネガポジで見えていたりはしないようですが、人間の色覚は数種類有ることが分かっています。そのイメージを表示します。写真の左上には小さくアルファベットが振ってあり、下記の色覚の頭文字になります。C型:一般色覚(Common), P型色覚(Protanope),D型色覚(Deuteranope), T型色覚(Tritanope)そしてA型色覚(Achromat)です。(A型は白黒なので写真はありません)
いかがでしょうか。一般色覚と比較すると異なる世界を見ていることになります。中には信号の判別が困難な場合もあるようです。それぞれの色覚の存在率や詳細についてはCUDのサイトに解説が有りますのでそちらをご覧ください。リンク先の色の見え方に関する詳しい説明文書(印刷用PDF)も合わせてご覧いただくと理解が深まると思います。
カラーユニバーサルデザイン(通称CUD)とはそのような色覚タイプの違いを問わず、より多くの人に利用しやすい製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方を言います。(出典:NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構) 機構がCUD検証を行い、認定された場合にはCUDマークの使用が許諾されます。周りを見渡してみると私の職場のゴミ箱や札幌市の市電運行情報モニターなど様々な場所、物に対してCUDマークが貼られていることに気がつきました。
というように、いまあなたが見ている景色は他の人が見ている景色と同じ色とは限りらないため、その際を吸収するような工夫がされています。ではそこで、色覚をシュミレーションできるアプリを紹介します。札幌在住の独立系研究者である浅田一憲(@asada0)さんが作成された色のシミュレータです。TEDxSapporoの講演にて浅田一憲さんの活動、そしてカラーユニバーサルデザインについて知ることが出来ました。
アプリ紹介文を浅田一憲さんのサイトより引用します。
他の人の色の見えを体験しよう!
「色のシミュレータ」は、様々な色覚特性を持つ人の色の見え方を体験するための色覚シミュレーションツールです。
スマートデバイスの内蔵カメラまたは画像ファイルから得た画像をリアルタイムに変換し、それぞれの色覚タイプ(2色覚)ではどのように色が見えるのか、シミュレーションを行います。
私が服薬指導時に用いるラインマーカーについて
さて、冒頭に紹介した3色マーカーですが、ピンク・オレンジ・青・緑・黄色の5色から選びました。これらの色がどのように見えるか色のシミュレータで見ていきましょう。見てみると下記の画像のようになります。
この5色から私はオレンジ・青・緑を選択して使用しています。一般色覚の方には容易に判別が付く色だからです。しかしながらこの3色ではT型色覚の方は青と緑の判別が困難と予想できるため、青と緑はあまり同時に使用しないように心がけています。
3色のペンを持ち歩くのが胸ポケットのスペース的に難しければオレンジと青の2色持ちをお勧めします。どの色覚でも別の色として認識されるのではないでしょうか。
色の使い分けについて
色の使い方は人それぞれあると思いますが、私は抗がん剤(内服および点滴)の服薬指導の機会が多かったため、治療のスケジュール説明時などに治療薬(抗がん剤)にはオレンジ、支持療法(制吐剤など)には緑を使用しています。某RPGゲームでのダメージ・回復の表記をまねてみました。その他の重要だと思われる箇所には青を使っています。
システムから出力される服薬指導用紙にCUDが採用されているところもあるかもしれません。しかし施設によっては患者への服薬指導書類をご自身で作成されていると思います。頭の片隅に少しでもカラーユニバーサルデザインのことを置いておくのは良いことだと思います。他人の色の見え方を意識している医療従事者はまだまだ少ないと感じます。まずはあなたから意識を始めてみてください。本記事が皆さんのお役に立てられると幸いです。
※もし間違いがありましたらご指摘いただけますと幸いです。
おまけ